【術後合併症】悪心・嘔吐【PONV】
手術には麻酔が必要ですが、麻酔自体が怖いという患者さんも存在します
麻酔は適切に行えば安全な医療行為なのですが、
患者さんにもより深く理解していただくことで、
より安心感を深めていただけたらと思います
ということで今回は麻酔の主な合併症の一つをご紹介したいと思います
静脈麻酔や全身麻酔などの麻酔の術後合併症の一つに『悪心・嘔吐』があります
PostOperative Nausea and Vomitingと呼ばれ、頭文字を取って
PONV
と呼ばれています
これまでPONVは小さな合併症として重要視されていませんでしたが、
PONVは患者さんにとって不快であり、
早期離床を妨げ日帰り手術では退院の遅れなどの原因になります
経験者の方は「すごく辛かった」という感想ではないでしょうか
実際の臨床では「吐く」ことは少なく、「極度の嘔気(気持ち悪い)」が多いです
当院では日帰り手術をより安全に快適にするために徹底したPONV予防対策をしています
(ここ最近の数百症例の静脈麻酔や全身麻酔でPONVは1件もありません)
成人においてPONVの発生頻度を高める危険因子は
- 女性
- 非喫煙者
- 過去にPONVあり/乗り物酔いしやすい
- 医療用麻薬の使用
- 2時間以上のガス麻酔
- 笑気ガスの使用
- 手術時間(30分長くなるごとに60%増加)
- 手術の種類
(腹腔鏡、耳鼻咽喉科、脳外科、乳腺、斜視、開腹術、形成外科の各手術)
などがあります
特に1〜4の女性、非喫煙者、PONV歴、医療用麻薬の使用が
4大危険因子と言われ、危険因子の数が
0ー10%
1ー20%
2ー40%
3ー60%
4ー80%
と、多くなるごとにPONV発生のリスクは高くなります
当院では手術を安全・快適に行うためこうした危険リスク減少の戦略として
- 手術時間の短縮(手術技術の向上による)
- 麻酔法の工夫(バランス麻酔、プロポフォールの使用、筋弛緩薬の不使用)
- 麻酔薬の適量使用(脳波計にて麻酔深度を正確に把握)
- 医療用麻薬の不使用ないし使用量を最小限に
- 笑気ガス不使用
- PONV予防薬の先行投与(セロトニン受容体拮抗薬、デキサメタゾン)
- デイ・サージェリー(日帰り手術)(日常生活に早く復帰した方が回復がよい)
- ERAS
など多角的なアプローチを行いPONVの発生を極力抑制しています
(ここ最近の数百症例の静脈麻酔や全身麻酔でPONVは1件もありません)
この取り組みには高度な手術手技、麻酔知識・技術のコラボレーションが必要です
PONV予防薬の先行投与においては保険適用外となる薬剤も複数あるため、
保険治療ではどうしてもPONV対策に制限がかかってしまい、
自費治療のみでしか万全の対策が取れないという現状もあります
(麻酔方法により自費治療になるのはこのためです)
結果として保険の手術と自費の手術では、技術面は当然のことながら
周術期(手術前・中・後)の『質』が違ってきてしまいます
安全で快適なデイ・サージェリー(日帰り手術)を行うには
- 高度な手術技術・麻酔知識・技術
- 術後合併症の予防
が重要です
Q:「入院を必要とする大病院での手術と同じですか?
A:「いいえ、違います」
ということなのです
欧米ではこのようなデイ・サージェリー(日帰り手術)が一般的に行われており、
当院では欧米同様の手術・麻酔を受けることが可能です
より安全で快適な手術や麻酔を希望される方は是非気軽にご相談ください
(手前味噌で恐縮ですが、当然手術も上手で評判なんですョ 笑)
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