奥が深い虫歯除去

虫歯除去は歯科治療の基本的処置の一つですが、
実はとても奥が深いのです

  1. どこまでが虫歯でどこからが健康な歯なのか
  2. 虫歯はどこまで除去すべきか
  3. 虫歯を除去する方法

1.どこまでが虫歯でどこからが健康な歯なのか



虫歯判断の優先順位
1.う蝕検知液による染色
2.切削感(手応え)
3.色

1.う蝕検知液による染色

虫歯除去にはう蝕検知液という虫歯部分に染色する液体を使用しますが、
これは虫歯菌そのものを染色している訳ではありません

虫歯とほぼ同じ大きさ(分子量)の色素なので、
染まったところは細菌が侵入可能なスペースがあることを意味します
なので、そこには虫歯菌がいる可能性が高いであろうという代物

染まったからといって、虫歯菌が本当にいるかはわからない…

また、この染色液は細菌と全く同じサイズではありません
メーカーによってサイズが異なるため、染まり方も違います
そのため、完全に染まらなくなるまで削ると、実は削り過ぎということもあります

どの製品を使用して、どの程度までの染色なら削るのか
センスが問われます

2.切削感(手応え)

虫歯の部分は柔らかく、健康な歯は硬いという性質があります
そのため、削るときの手応えは重要です

ダイヤモンドポイントは高速回転で、なんでも削れてしまうため、切削感は得られません
そこで、う蝕除去用のかバイトバーという刃物が何枚もついた器具を用い、
低速回転で切削感(手応え)を感じながら除去していきます

虫歯除去は人間の感覚というアバウトなものに大きく依存しています

どの程度まで削るのか
センスが問われます

3.色

実は、色は参考程度にしかなりません…

真っ黒で、脆い部分は虫歯なのですが、
うす茶色の部分まで虫歯と勘違いしている患者さんも少なくありません




このように、虫歯除去の実際は虫歯菌を実際に見ながら除去している訳ではなく、
人間の感覚とセンスというかなりアバウトな部分に大きく依存しています

日常的にマイクロスコープで虫歯を観察しているので、
肉眼で見るより、想像以上に歯の中で立体的に進行していると感じます
(そのため肉眼では取り残しがよくあります)

2.虫歯はどこまで除去すべきか



虫歯菌を直接見て治療できない以上、

どの程度まで除去すべきか

という問題が常に付き纏います

たくさん切削すれば虫歯の除去は確実になりますが、
神経が生きている歯であれば神経が露出してしまい、根管治療が必要になりますし、
神経のない歯でも過剰な切削をしてしまうと歯が薄くなり割れてしまいます

かといって、虫歯をたくさん残してしまうと治療が失敗してしまいます

実は、除去した後の封鎖も治療予後に大きく影響すると言われています

どの程度まで削るのか
センスが問われます

3.虫歯を除去する方法



一度に虫歯を除去する方法以外に、
複数回に分けて虫歯を除去する方法もあります

『ステップワイズエキスカベーション』

歯髄に近接した大きな虫歯に対して、すべての虫歯を取り除くのではなく、
歯髄に近いう蝕を一部残し、薬剤を貼薬することにより、残存させたう蝕を硬化させる
その後、リエントリー(再治療)を行い、
硬化しなかったう蝕を完全に除去し、最終修復を行う方法

段階的に虫歯を取ることで、歯髄を温存しようという作戦です
この治療を成功に導くためには、患者さんの治療に対する理解と絶対の協力が必要です


さて、いかがでしたか?

「虫歯を取る」


どの歯医者さんでも日常的に行われているなにげない診療行為ですが、
追究してみると、とても奥深いものですね

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