オーベン(指導医)から言われた言葉

大学のポリクリ(臨床実習)でオーベン(指導医)から言われた言葉で
今でも心に残っている言葉があります

『ちゃんと治療しないと歯壊者(はかいしゃ)になるよ』


二次カリエス
不適合なつめものの脇からの虫歯

みなさんが「歯科治療」と呼んでいるもの

歯を削る、歯を抜く、骨に異物を埋め込む(インプラント)
行為だけ抽出すれば、どれも他人の体に対する「傷害」であり、
身体にとっては「外傷」でしかありません

みなさんが「治療」と呼んでいるものは

  • 医学的な根拠に基づいた、医療的正当性がある行為であること
  • 行うことで患者さんに利益が得られると予見されるもの
  • 患者さんの同意を得ておこなう

知らないうちに『治療』=よいものと思考停止していませんか?


少々乱暴な言い方をすれば

ちゃんとしていない治療は口の中を壊しているだけ


「治療」の顔をしているだけタチが悪い
(患者さんは『治る』と思っていますから)

「治療」すれば『治る』わけではない

治療が必要なのか(診査・診断)、必要ならどういう治療を受けるのか、
再治療が必要にならないように予防するなどが重要です


オーベン(指導医)とは対極の、悪い先輩歯科医師の言葉を最後に紹介します

『歯の治療の失敗は、抜いてしまえばわからない』


この言葉を聞いた時、なんて恐ろしいことを言うのだろうと思いましたが、
同時に、実に本質を捉えたものだと感心したものです

「失敗」には理由があるが、「成功」には理由がないこともある

「今までそんなに深く歯のことについて考えてこなかったし、
普通の治療を受けていて困ったことはないんだけど…」



手を抜いたテキトーな治療でも治ってしまうときは治ってしまいます
しっかりと治療しても失敗することもあります

この世の中に100%成功する治療はありません

ただ、「成功」には理由がないこともありますが、
「失敗」には必ず理由があります

プロと素人が対戦するゲーム、例えば麻雀などの運の要素が強いものでは、
たった1度の対戦であれば、素人が勝つこともあるでしょう
しかし、対戦を重ねた時の勝率はプロと素人では差は歴然です

治療者は虫歯、歯周病、根尖性歯周炎などの主要な歯科疾患と毎日対戦を繰り返します
当然ベストを尽くしても治らないこともありますが、以上の理由により、
患者さんには少しでも勝率(治る可能性)が高い治療を選択して欲しいと思います

歯は増えることのない財産

歯という財産は、減ることはあっても増えることはありません
勝率の悪いギャンブル(治療)を繰り返せば、ゼロ(入れ歯)になる可能性は高いでしょう
どのようなストラテジー(戦略)で望むのか、つまり
どの勝率(治療)を選ぶかは患者さんの意思決定なのです

(治療)結果を引き受けるのは、自分以外ないのですから

Tag: コラム