垂直的歯根破折

『歯が割れているかもしれないから、抜歯しましょう』


ということを先生から言われて、痛みも腫れもないのに抜歯になった患者さんって
意外と多いのでは?

このような患者さんはよく「抜かれた」と表現されます(笑

診断が『(垂直的)歯根破折』であれば、処置は『抜歯』が適応です


ごく稀に、「接着」を行い保存する先生もおられますが〜
当院では、長期予後などの科学的根拠(データ)がないので、行っておりません

では、『歯根破折』つまり「割れている」はどのように診断すると思いますか?
破折診断は、「歯を残す」or「抜歯」の非常に重要な診査・診断なのですが…

意外に思われるかもしれませんが、精確に診断できる歯科医師は少ないと思います
(だから割れている「かも」しれないと言うのです)


結論から言えば、現在の医療技術で100%の精度で診断することは難しい


実はそれ程、難しい診断であり、奥が深くもあります


歯根破折が疑われるのは

  1. 1か所のみ深い歯周ポケット
  2. 垂直的な骨吸収があるレントゲン画像
  3. 歯肉から4mm以内の瘻孔
  4. 噛むと違和感がある or 痛い



これらの条件が重なるほど、折れている可能性を高く疑います


現在、一番確実だと思われる方法は何かというと

『マイクロスコープ下で破折線を確認する』


ということです

裏を返すと、そうでない限り『破折診断』できないということです


マイクロスコープで垂直的破折が無ければ
その歯は残せる可能性があります
垂直的破折が確認できれば、抜歯になります

難しいのは、治療後に破折する可能性もあるということ
神様ではないので、「いつ破折するか」は予想できません…


マイクロスコープ下で垂直的破折を発見した症例



金属のかぶせものと土台を除去
かぶせものと金属の土台を外した状態


メチレンブルーによる染色
メチレンブルーによる染色にて破折チェック


クラック
根管までつながる垂直的破折を発見(紫丸)
前回の治療でのゴムつめものの周囲に残留した感染歯質(黄色矢印)


破折線強拡大
クラック部の強拡大


このような「クラック」と呼ばれる破折は特に診断が難しいです


おそらく、顕微鏡なしの肉眼的治療では

気がつかずに治療→治らない→再治療の繰り返し→治らない→抜歯

気づかずに、無駄な治療を繰り返していることでしょう


この症例も、歯を残すために治療を開始しましたが
垂直的破折のため抜歯になりました

マイクロスコープによって確実な診断が行えたことにより
無駄な治療を回避でき、時間と治療費を節約できました


確実な診断のためのマイクロスコープでもあるのです


p.s.
再三再四になりますが、『診査・診断』が一番重要です
そして、『診査・診断』が一番難しいです

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