【症例報告】骨移植材を用いないサイナスリフト②

上顎臼歯部へのインプラント治療を困難にする要素として、
上顎洞の存在による骨の高さ不足というものがあります

治療方法としては

  1. サイナスリフトという骨造成を行う
  2. ショートインプラント(短いインプラント)を使用する

が考えられます


サイナスリフトの利点
・通常〜長いインプラント使用可能
・長期的な安定性のエビデンス(根拠)が十分ある

サイナスリフトの欠点
・手術回数や治療期間、費用が増える


ショートインプラントの利点
・骨造成が不要となるため、手術回数や治療期間、費用面が有利

ショートインプラントの欠点
・長期的な安定性のエビデンス(根拠)が不足している


ショートインプラントは最短で5mm程度で、幅が広いため、
骨の幅が薄かったり、骨の高さが5mm以下の場合は使用できず、
やはりサイナスリフトが必要となります


当院で行うサイナスリフトは『骨移植材』を一切使用しません
(自分の骨、他人の骨、牛や豚の骨など)

骨ができる条件を手術によって作る

という方法を用いています


73歳、女性
上顎右側臼歯部にインプラント希望

術前CT
術前CT

骨の高さは2〜3mm

余談ですが、この患者さん他院でCTも取らずにインプラントできますと言われて、
見積もりをもらっていましたが、このご時世、CTも撮影せずにこの骨のどこに
インプラントするつもりだったのか、いまだに疑問のままです


洞粘膜挙上骨復位
術中の様子

マイクロソーで骨を切り出し、骨のできる仕組みを内部に作ったら、
切り出した骨を戻します


術後5ヶ月CT
術後5ヶ月CT

骨がしっかりとできてますね


埋入後1ヶ月デンタル
インプラント埋入後(術後1ヶ月)

上顎洞に貫通することなく、無事に10.5mmのインプラント2本を埋入


生体に入ったインプラントは生体に適合すべく洗礼を受けます
インプラント上部の骨は正常であっても
垂直的・水平的に1~2mm骨吸収することが知られています
これを生物学的幅径(Biologic Width)といいます

これは、どんなメーカーのどんなインプラントにも必ず起きる現象なので

ショートインプラント5mmも例外ではありません


5mm-2mm=3mm!?


これをどう考えるかがショートインプラントのキモだと思います

p.s.
確固としたエビデンスが確立されるまでは、
基本的にコンベンショナルな方法がファーストチョイス
で良いのではないでしょうか

個別の詳細な治療に関しては、必ず主治医の先生に相談してくださいね!

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