根管治療後の我慢できない痛み、『フレアーアップ』

フレアーアップ

『痛くない歯を治療したら、とても痛くなってしまった』

こんな経験のある患者さんもおられるかと思います
そして、患者さんは「あの歯医者、ヘタクソじゃないか?」などと思う訳です

根管治療後の痛み

根管治療後の痛みについてさまざまな研究データがあります

  • 根管治療後、約8割は何らかの違和感ないし軽度の痛みが生じる
  • 2〜3日で約8割の症状は消失、長くても1週間で治る
  • 初回治療より再治療の方が生じやすい
  • 症状がある歯の方がない歯よりも生じやすい

「痛み」は人によって感じ方も異なり、数値化できないため、評価が難しいのですが、
実は、根管治療を行うと、ほとんどの方は違和感や軽度の痛みは感じることが多いのです

根管治療後の激痛=「フレアーアップ」

根管治療後の違和感程度であれば、大なり小なり誰しも感じるものですが、
稀に我慢できないような痛みが出ることがあり、

専門用語で『フレアーアップ』と呼ばれています

フレアー アップの発生率

フレアーアップは1.4〜1.6%程度の発生率であると、様々な報告がされています
自分の臨床経験的にも同程度の割合であると感じます

これは、患者さんにとって非常に辛い痛みなので、
発生すると、治療者にとっても心苦しく切ない思いになります

フレアーアップの原因

フレアーアップの原因は

  • 器具による機械的刺激
  • 消毒薬による化学的刺激
  • 細菌的な刺激

などが考えられますが、主な原因は「細菌的な刺激」と考えられています

フレアーアップを防ぐには

1.根の先から根の中の汚れを押し出さないようにする

残念ながら、現時点での全てのテクニックでは、
根の先から根の中の汚れの押し出しを完全に防止することはできません
ただし、根管治療のテクニックに精通し、押し出しにくいとされる方法を適用すれば
その確率は少なくなると考えられています

2.なるべく一度に歯の中の細菌を減少する

細菌の主な減少は物理的に汚れを除去することと消毒薬で徹底的に洗浄することです
限られた時間の中では細菌の徹底除去は困難です
そのため、マイクロエンドでは1回の治療時間を90〜120分確保し、
最小限の刺激で治療を終了することを目指しています

治療の回数は少なく、1回の治療時間が長いほうが細菌減少に有利です

3.治療と治療との間に抗菌的な薬を歯の中に入れる

歯の中の清掃を終えた後、次回の治療までの間に、生体にとって害が少なく、
抗菌性のある薬を根の中に挿入し、さらなる細菌の減少を試みます

4.減圧(オープン)と称する、仮の蓋をしないことを避ける

痛みの一番の原因は「細菌」なので、新たな感染を防ぐためにも、
仮の蓋を外したままにすることをせず、歯の中の清掃を徹底的に行い、
しっかりと蓋をして感染を最小限にすることが必要です

外したままにすると、根の先まで感染が広がり、難治化(治らない)することもあります

5.無菌的環境で根管治療をする

口の中は「細菌」だらけで、彼らもしぶとく減らすことは容易ではありません
治療をラバーダム器具の使い捨てをはじめとする無菌的環境で行うことで、
新たな感染を防ぎ、感染してしまった根の中の細菌を可能な限り減らします
 
「ルールに則った根の治療」では『フレアーアップ』を最小限にできるでしょう
もし、以前の治療がルールを守らない治療であれば、
ルールを守ることで回避できる可能性が高くなります

フレアーアップが起きてしまったら

もし、残念ながら『フレアーアップ』が起こったとしても、
『フレアーアップ』に対処する知識と経験がわれわれにあり、
痛みや不快感を最小限にすることが可能です


p.s.
根管治療後の違和感や不快感は治療の成功率には影響がないとされています

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