モダンテクニックによる外科的歯内療法の2年経過
62歳、女性
主訴:前歯の歯ぐきが腫れて痛む
経過
- 他院で自費の差し歯をしたが、その後すぐに歯ぐきが腫れて痛む
- 再治療をしたが、すぐに症状再発
- 口腔外科で歯根端切除術を行なったが、症状改善なし
初診時のレントゲン
2本の歯の根の先端に黒い影があります
歯根端切除を受けたと患者さんは言っていましたが…
歯根の先端がカットされていないため、「根尖掻爬術」の可能性大
(手術、5〜10分で終わったと言ってたし)
いずれにせよ、グローバルスタンダートから外れた治療で、
治る可能性は少ない…
正攻法では
- 歯内療法
- 外科的歯内療法
のステップですが、患者さんは
- 金属ポストが太く長いため、外すためには歯をたくさん削る必要がある
- 金属ポストが太く長いため、外す時に歯根破折→抜歯
- お金をかけた被せ物なので外したくない
以上の理由より、モダンテクニック による外科的歯内療法で対応することになりました

術後2年のフォロー
動揺(ー)、打診痛(ー)、サイナストラクト(ー)
根の先端の黒い影は縮小
基本は歯内療法から
歯内療法が行えない場合で、歯の保存を希望される場合には
『外科的歯内療法』を行いますが、あくまでも基本のステップは
『歯内療法』→『外科的歯内療法』です
理由は
- 歯内療法だけでも治る可能性がある
- 外科的歯内療法を行うにしても、歯の中の細菌が少ない方が成功しやすい
- 外科的歯内療法を行うと根が短くなる(歯冠ー歯根比が悪くなる)→歯の寿命に良くない
診断は1つだが、治療法は1つではない
正しい診査・診断を経れば、どの歯科医師が行っても、1つの正しい診断にたどり着きます
「根尖性歯周炎」と診断がついても
- 何もしない
- 抜歯
- 保険で歯内療法
- マイクロエンド
- 外科的歯内療法
少し考えただけでも患者さんには5つの選択肢があります
さらに、②抜歯を選択した場合は、
a.歯を入れない
b.ブリッジ(可能であれば)
c.入れ歯
d.インプラント
という選択肢があります
歯科医院の設備、ドクターの技術、患者さんの価値観、全身状態、医療コストなど
様々な因子が関連してその患者さんの「最適解」は異なります
どの治療にも「メリット」と「デメリット」があります
特に患者さんの『価値観』の理解は治療者の努力で解決できる問題ではなく、
治療結果も患者さん自身が引き受けるしかありません
なのでバイアスのない正しい医療情報を元にして、
患者さん自身がその治療結果も踏まえた上で『意思決定』することが大事と考えます
p.s.
外科的歯内療法の成功率
トラディショナルテクニック:約50%(口腔外科で一般的に行う)
モダンテクニック:約90%
Tag: 治療