矯正治療後に生じた犬歯の内部吸収
矯正治療後に歯根の内部吸収を生じ、かかりつけ歯科医院を受診
根管治療を行うも、歯ぐきの腫れ(サイナストラクト)と痛みが治まらず
かかりつけ歯科医院の主治医より相談いただいた症例
内部吸収とは
歯が神経のある内側から溶けていくことです
初診時のレントゲン
右側犬歯:動揺(ー)、歯周ポケット正常、打診による痛み(+)、
口腔内の根尖部にはサイナストラクト(膿の出口)を認めます
前医で、通常の根管治療を行い、GP(ガッタパーチャ)とユージノールシーラー
を用いて根管充填をしたが、症状が治まらない
患者さんへ治療オプションの提示
- 抜歯してインプラント
- 抜歯してブリッジ
- 根管治療をして歯を保存する(チャレンジング)
この患者さん、矯正治療を受けており、犬歯が遠心移動された影響なのか、
元々上顎洞が大きいのか、またはその両方なのか、
不幸なことに、犬歯の上方に上顎洞が存在しているため、
インプラントに必要な骨量がなく、CT検査にて
インプラントにはサイナスリフト(骨造成)が必要
という診断結果となりました…
(治療期間1年半〜2年、費用もかなり…)
歯の保存が難しい治療であることを説明
話し合いの結果
患者さんは
根管治療をして歯を保存する(チャレンジング)をトライしたい
という意思決定をしました
※内部吸収の根管治療は初めてであるため、専門医への受診を勧めましたが、
当院で治療したいという希望
歯冠部に虫歯の取り残しがあったので、除去、
CRにて隔壁製作、ラバーダム、オラシール、消毒して根管治療開始!
本来の根管と形態が違うので、正直、GP取るのメッチャ大変でした(汗
(GPもオーバーだし、根尖破壊されているし)
GPR、超音波チップ、Ni-Tiファイル、XP-endo Finisher等、総動員で除去
除去だけで治療回数2回かかりました…
(この当時XP-endo Shaper日本じゃ売ってなかった…)
GP溶解剤使わない方がいいみたいです
細かくなったGPが象牙細管につまるだけらしい…
MTAにて根管充填
後日、ラバーダム下にてレジンによる支台築造(直接法)
仮歯を装着し、3ヶ月の経過観察…
右側犬歯:動揺(ー)、歯周ポケット正常、打診による痛み(ー)、
サイナストラクト(膿の出口)も消失し、症状もありません
ジルコニアオールセラミックスによる最終補綴とレントゲン
(相変わらず技工士さん、お上手です)
治療開始から6ヶ月、症状もなく、レントゲンも問題ありません
治療回数:根管治療90分×4回→かぶせもの
なんとか歯を残すことができました
ルールを守って治療しただけ
今回の症例は、何か特別なものを用いた訳でも、特別なことをした訳でもありません
自分はただ、「歯内療法の『ルール』を守って治療した」だけです
決して、スペシャルな技術を持っている訳でもありませんし、
自慢したい訳でもありません
「ルール」さえ守れば、誰でも同じ結果になっていたと思います
「ルール」さえ守れば同じ結果が得られるというのが歯内療法の魅力であり、
より多くの患者さんに知って欲しいことでもあります
治療に「必ず」はない
どんな治療でも「必ず」はありません
われわれは最善を尽くして治療することをお約束しますが、
最善を尽くして治療しても、良い結果とならないこともあります
そのため、重要なのは患者さん自身の『納得』です
そして、納得は患者さんの自発的な意思決定によるものである必要があります
当院で標準治療を行う場合、充分な説明やカウンセリングを行っています
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