激痛を繰り返す奥歯の根管治療、見逃し根管(MB2)

初診時デンタル

初診時のレントゲン

根管解放、根の先に細菌感染を示す黒い影あり、打診による痛み(+)
上顎洞底部にも炎症を示す白いくもりあり

30代、女性
銀歯の歯に度々激痛が生じて、複数回根管治療を繰り返している
治療を繰り返したくない希望

診断:Previously treated、Symptomatic apical periodontitis

複数回の治療を受けている歯であり、
チャレンジングな治療であることを了承の上、マイクロエンド開始



MB2

この状態で来院
根管解放、感染歯質の残留、見逃しの根管(MB2)の可能性あり



う蝕検知液

う蝕検知液で染め出し、感染資質は多量に残留、除去



拡大形成後

う蝕除去、隔壁(CR)、ラバーダム、やっぱりありましたMB2
拡大形成し適切な消毒薬にて充分な洗浄

X-Pendo Finisherや
超音波による特殊な洗浄も併用
(PUI:Passive Ultrasonic Irrigation)



MTA根充

MTAセメントによる根管充填、ラバーダム下でファイバーコア



MTA根充後デンタル

根管充填、支台築造後に仮歯セット
すでに、根の先端の黒い影は消失傾向、打診痛(ー)、サイナストラクト(ー)



セラミックスセット時

仮歯にて3ヶ月経過観察し、痛みも腫れもないので
ジルコニアオールセラミックス装着



治療回数:根管治療90分×2回


虫歯や歯周病にならないようにしっかり予防してくださいね〜
半年、1年と経過観察予定


この症例から得られた知見

①再治療は難しい

科学的根拠に則った治療(マイクロエンド)を行ったとしても、
必ず治るというわけではありません

一般的に、初回より再治療、再治療より再々治療の方が治りにくくなります
これは、治療を繰り返すたびに歯の中の細菌を減らしにくかったり、
それまでの治療で治りにくい原因が作られている可能性があるからです
(医原性の要因:歯の中の穴、変な場所の切削、ファイルの破折など)

初回にキチッとした治療を行えば90〜95%は治ります

②根の治療は何度も行えない

根の治療で治らなかった歯は抜歯する以外ありません
治療を繰り返すうちに歯が薄くなり破折となれば、
それもまた抜歯する以外ありません

歯を長持ちさせるためには、できれば初回で、そうでなければ、
なるべく早い段階でキッチリとした治療を受け再発させないことです

③痛みや違和感がなくなるまで時間がかかることがある

疼痛が強かったり、痛みの期間が長かった歯の場合、
たとえ治療が上手くいっていたとしても痛みや違和感が引くまで
時間がかかったり、症状が完全に無くならないこともあります

また、痛みから『非歯原性歯痛』になることもあります
なので、仮歯の状態で3〜6ヶ月経過観察することがあります

④ラバーダムを使わない肉眼での治療には限界がある

歯の根の病気は『細菌』が原因です

口の中には沢山の細菌が存在し、歯の中はとても複雑です
目視できないため、経験と勘に頼った治療では
細菌が減らしきれず失敗するリスクが高いことを知って欲しいと思います

マイクロスコープを使用した科学的根拠、ルールに則った治療により
根の治療精度は飛躍的に向上します

MB2は上顎の第一大臼歯に約60%でみられる報告があります


p.s.
この症例に限って言えば、
何年にもわり何度も繰り返した治療がたった2回で終わっているのです
(1回の治療90分ですが)

多くの人に科学的根拠(ルール)に基づいた治療を知って欲しいと思います

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