今こそインプラント周囲炎と真剣に向き合おう@大阪

久しぶりにインプラントの話題です

会場

今こそインプラント周囲炎と真剣に向き合おう
BIOHORIZONS Meeting Osaka 2017



というユーザーミーティンングに参加してきました
たまには勤勉ぶりをアピールしておくこととします(笑

インプラント治療の現在のトピックスは「インプラント周囲炎」
だと個人的に思っています

少し前までは、「骨結合(オステオインテグレーション)」だったと記憶していますが
診査・診断、インプラント材料の進化、エビデンスの蓄積、リカバリー法等
ほぼ確立された感があります


中長期的な問題として「インプラント周囲炎」があり、現在そこに焦点が当たっています

結論を先に申します
ちゃんとした知識・技術がある歯科医院でインプラント治療を受けて
しっかりメンテナンスしていればだいたいは大丈夫(なんとかなる)!

インプラント周囲炎とは

インプラント周囲疾患には『インプラント周囲粘膜炎』『インプラント周囲炎』があります
どちらも、患者さんには余り症状が出ないため自身では気づかないことがほとんどです

インプラント周囲粘膜炎インプラント周囲炎
元に戻るかどうかもどるもどらない
出血
排膿±
骨の吸収なしあり
リカバリー治療法バイオフィルムの除去(ブラッシング)手術
リカバリー率ほぼ治る(良い)約40〜60%(悪い)


インプラント周囲炎の診断基準

明確な基準やガイドラインはない、論文によってマチマチ
なので、発生率も違ってしまい単純な比較はできないのが現状です

インプラント周囲炎の発生率

ポケット5mm以上、骨吸収2mm以上を基準とすると18.8%
インプラント単位では約10%、患者さん単位では約20%

とある先生の実績報告では、

  1. しっかりとした知識・技術・経験のあるドクターに治療を受けている
  2. 最低、3ヶ月ごとのメンテナンスを真面目に通ってくれる
  3. 非喫煙者

この場合のインプラント周囲炎の発生率は10年で約5%ほど
(当院でのインプラント経過でも大体その実情に合ってます)

逆に、喫煙者でメンテナンスに通わないと発生率は100%とのことでした

インプラント周囲炎と歯周炎の違い

インプラント周囲炎も歯周炎も炎症病変ですが、
歯周炎の場合はポケットの底部に健康な歯周組織があり
インプラント周囲炎の場合はポケット底部に健康な組織がありません
つまりインプラントの場合、生体のバリアが無いため、歯周炎と比較して

炎症の進行が急性的で、病変が大きくなりやすい

という特徴があり、

歯周治療の場合は、リカバリー後はメンテナンスが容易になるのに対し、
インプラント周囲炎の場合は、リカバリー後はさらにメンテナンスが困難になります

予防・メンテナンスが重要

インプラント周囲炎について判っていることは少ないのが現状です
どうやら『バイオフィルム(細菌)』が関係していることは間違いなく、
インプラント周囲炎のリカバリー率はあまり高くないため、
現在は、インプラント周囲炎になる前のインプラント周囲粘膜炎で食い止める

『予防・メンテナンス』が重要

インプラント周囲粘膜炎でなんとかせき止めよう!というのがコンセンサスでした

メンテナンスはオーダーメイド

インプラント治療は患者さんごとのオーダーメイドであり、
患者さんの手先の器用度合いやモチベーション等も十人十色なため、
メンテナンスも一人一人に合わせてオーダーメイドで行う必要があります

メンテナンスまでしっかりしている歯科医院を是非選んでください

インプラント治療は危険なのか?

結論としては、リスクはありますがルールに則った治療を行えば安全に治療ができる

この世の中に成功率100%の治療はありません、どの治療にも成功と失敗があります
これは、治療には様々な因子が関係するからです

インプラント治療も当然リスクがある訳です

ちゃんとしたインプラントロジスとの元で、メンテナンスしやすい上部構造を装着し、
定期的なメンテナンスにしっかり通えば、20%→5%も可能なのです


当院では『インプラント周囲炎』のリスクも説明しています

インプラント治療は歯を失った場合のファーストチョイスになる場合が多いのも事実

インプラント周囲炎になってしまったら

まず、インプラント周囲炎にならないようにすることが重要です

当院でのインプラント治療によるインプラント周囲炎のリカバリーよりも
他院でのインプラント治療によるインプラント周囲炎のリカバリーの方が圧倒的に多い
というのが現状です

  • 生物学的ルールを無視したインプラントの選択
  • 不適切なインプラントポジション
  • 清掃できない上部構造
  • 余剰セメントの取り残し
  • 過度の咬合力
  • そもそもメンテナンスしていない(メンテナンスについて患者さんが聞いていない)

それが要因なのかは断定できかねますが、問題がる場合がほとんどです

リカバリー(保存)を試みますが、最悪の場合、インプラント撤去になります


値段だけでインプラント治療決めていませんか?
本当にそれは安いインプラントなんでしょうか?

現在当院で行なっているインプラント治療の考え方は、
オーソリティーの先生方と考え方や方法が同じでした

こっちはもう10年以上前からそれ実践してるんですけどね
やっと時代が追いついてきたなと(笑

昔は審美の先生に馬鹿にされていたんです「審美的になってない」ってね
現在では立場が逆転しましたね、あんたのは「清掃性がなってない」
(お酒の席で面と向かって言われた時は、さすがに立腹ものでした)

他人が行なったインプラント治療をたくさん見る機会が多かったため、
症例を丁寧に観察して気がついていたのです

インプラント治療を考えている患者さんへ

自分がインプラント治療を受けようと思う歯科医院が
インプラント周囲炎についてどのレベルにあるのか知りたいと思いませんか?

まず、インプラント治療の経験が豊富で、医療に真摯な歯科医院であれば、
インプラント治療のリスクとしてすでに『インプラント周囲炎』が説明されます
(そういう問題があるということが少なくとも判っているということ)
沢山のインプラント治療をすれば必ずインプラント周囲炎に遭遇するからです
なので、しっかり対応してもらえる可能性が高いです

「インプラント周囲炎になったら、どういう対応をされますか?」
「インプラント周囲炎のリカバリーをしたことありますか?」

と質問するのも良策です
自院で対応不可能でも連携先があるなどが聞ければより安心ではないでしょうか

ミーティングに参加しての私的雑感(以下駄文ゆえ免責御免)

今回のようなメーカー主導のミーティングに久し振りに参加しました
数年前であれば、この手のインプラントメーカー主催のミーテイングは

「どうだ!俺の症例凄いだろう!」という自慢大会と化していたので足が遠のいていました
(いわゆる『チャンピオン症例』)

その辺の有名な先生より自分の方が手術も速くて綺麗で上手だし、成功率も高いし(笑
(「私、失敗しないので。」は言い過ぎか、というか言えない)
別に余り驚かないんですよね、「あー、そんなもんか」みたいな
症例数とかは凄い多いので、ビックリします「そんなにやってるんだ!?」って

今回のミーティングのように、失敗症例を出して「失敗の症例から学ぶ」という変化は
日本におけるインプラント治療が成熟してきた証であるように思えました

講演の中で抜歯→インプラントのケースにおいて
「歯内療法」ないし「歯内歯周病変」の可能性がある症例が数例ありましたが、
当然のごとく、歯内療法的な診査・診断は行われず歯周病の診断で『抜歯』されていました
それらについては自分的には保存の可能性はあったと考えます
(少なくとも、診査・診断は検討すべきではないでしょうか?)

インプラントのセミナーで講演をするような先生でも、
歯内療法の診査・診断ができていない?していないだけ?というのも興味深かったです

「そんな簡単に抜歯するなよ〜」


と心の中で叫んでいる自分がいました(笑
インプラントはセカンドチョイスでは良い治療であることは疑いの余地がありませんが、
歯を残せるのならその方がやっぱいいよねと再認識した次第です
(それからでもインプラント治療はできますから)

久し振りに、興味深い勉強会でした


p.s.
リカバリーまで可能な歯科医院は少ないため、
どうしても特定の歯科医院に患者さんが集まってきてしまうのですよね…

外科医であれば、ドラマみたいに「手術は成功しました」とは決して言わない
「手術は予定通り終わりました」と言います
手術が終わった時点というのは外科治療のほんの「入り口」でしかありませんから

成功には理由がないことがあるが、失敗には必ず理由がある

あ、あとインプラント治療をすでにしちゃってる患者さんは、
何もなくてもちゃんとメンテナンスに通ってくださいね♪

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